土曜授業の勤務問題

 

 そもそも、教職員の週休2日制を実現するための「学校5日制」である。

 今日、目的と手段がひっくり返ったような、全く反対の誤った解釈をしている教育行政当局も一部にあるようである。

 

○ 学校五日制 そもそもの背景

 

 勤務時間の短縮や週休2日制の導入の背景には、各国先進国の勤労者と比較して、わが国勤労者の長時間にわたる労働=いわゆる「働き過ぎ」批判への対応を求められていたことが挙げられる。

 

 1985年、日米貿易摩擦による米国の対日強硬圧力を打開するため当時の中曽根内閣が設置した「国際協調のための経済構造調整研究会」は、1986年4月検討結果の報告書(いわゆる前川レポート)を取りまとめた。

 

 この前川レポートでは、わが国経済構造を国際協調型経済構造に変革していくため、労働時間についても、「欧米先進国並みの年間総労働時間の実現と週休2日制の早期実現を図る」ことが提言された。

 

 また、1988年5月には、政府の「世界とともに生きる日本ー経済運営5ヶ年計画(閣議決定)において、「我が国の労働時間は欧米に比べて年間200~500時間長く、生活の豊かさを実感できない要因の一つとなっている」との認識の下、労働時間短縮の推進方策として、「完全週休2日制の普及を基本に、労働時間の短縮に努める。」とされた。

 

 その上で、同計画においては、「学校の週5日制については、国民の理解のもとに、できるだけ早期に実現するように努める」ことを併せて提言した。

 

 これらを受けて、1991年の政府の行政改革審議会の答申において、「公務員の完全週5日制を早期に実行する。また、学校の週5日制に向けた検討を急ぐ」ことが提言され、学校週5日制は労働時間短縮と週休2日制を実効あるものとするための政策課題の一つとして認識され、その推進を求めた。(明星大学 樋口修資「学校5日制下の土曜授業実施についての考察」から引用)

  

 

○ 勤務の振り替え

(1) 長期休業中を前提をしたものではない。

・振り替えの場合は、下の②→③→④の順で推奨される。(2015.3.24.県教委)

・労働安全衛生上、望ましい順を強いてあげると①→②→③→④ですが、③、④は法定週40時間労働を超えるものであり、今回の土曜授業のために、無理やり「できる」としたもので、職員の健康上からも推奨しません。

 

 ① 土曜日に振り替え勤務をせず、週休日として休む。(これまで通り)

  ② 「原則、同一週内(日曜日から土曜日に至る1週間)に振り替えを済ませ

     て、土曜日に勤務する。」(時間外労働とならない)

 ③ 「②により難い場合は、勤務することを命ずる必要のある日の翌日から

     起算して6日以内において振り替えることができる」(1週間単位では時間外労働)

 ④ 「学校運営上振替が行いにくくなることも想定されるため」

(例外措置として)土曜日の勤務を同一週以外の前8週、後16週内で振り替えることができる。(前後24週の期間で見ると時間外労働ではないが、1週間で見ると時間外労働)

 

(2) 振り替え指定は個人ごとに本人の希望を基本

(3) 変更は年休の時季変更権に該当する程度の支障がある場合

(4) 年度内に完結

(5) 勤務時間 3時間50分  

(6) 2回の土曜授業で1日の振り替え

 

○ 法律上の問題

・現 行 週  7:45×5日=38:45 < 40時間(労働基準法第32条)

・土曜授業週  38:45+3:50=42:35 > 40時間

・労働基準法に示された最低基準を超える。

 

 条例では(鹿児島県学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例)

・1週間の勤務時間…「学校職員の勤務時間は、休憩時間を除き、4週間を超えない期間につき1週間当たり38時間45分とする。」

 

 ・週休日及び勤務時間の割振り…「日曜日及び土曜日は、週休日(勤務を割り振られない日)とする。」「学校の長は、月曜日から金曜日までの5日間において、1日につき7時間45分の勤務時間を割り振るものとする。」

 

・そもそも学校は変形労働時間が必要とされるような特殊な職場なのか?

 

○ 労働実態からの問題

・すでに、勤務時間調査を見れば、平常日が慢性的超勤(労基法違反)にあるのは明らか。

・一層の労働過重につながり、県教委施策「勤務時間の適正化」に逆行する。

・土曜授業時数3時間上乗せすると、その準備時間も発生し、労働過密をもたらす。

 

・従来2日間で日頃の疲労軽減・自由の回復を図っていたが(実体的には前日金曜夕方から)、通勤等を含めれば、実質半日以上の勤務増⇒休養の減少によって、プラスマイナス1日分の疲労回復効果が低下、健康障害につながりかねない。

 

・これまで定着してきた週休2日制やハッピーマンデー制度(月曜日を休日とすることによって土・日と合わせた3連休とし余暇拡大や経済効果をねらった国策)、次世代育成施策とも矛盾し、教職員の生活軽視、士気低下の可能性大。

 

・以上のことから、「学力向上」につながるかは疑問。継続的検証が必要。

 

○ 解決のヒント(確認)

 (1) 頻度

  ・月の上限は1回、第2土曜

  ・年間回数は固定化したものではない。

  ・教育課程編成権は当該学校にある。

  ・土曜授業の趣旨を考慮し、年度ごとに編成する。

  ・交渉事項である。(週休日の勤務)

・原則として時間外勤務は命じないこととする。

 時間外勤務を命ずる場合は学校の運営が円滑に行われるよう関係教職員にはかり、繁忙の度合い、健康状況等を勘案して、その意向を十分尊重して行うようにすること。

 時間外勤務によって生ずる勤務時間について職員団体から申し入れがあった場合は、誠意をもって交渉に応じること。

 また、混乱を生じないようにするためできるだけあらかじめ職員団体とも話し合って、一方的命令にならないように配慮すること。

 

 (2) 内容

・「例えば、地域と連携した体験活動を行ったり、豊富な知識・経験を持つ社会人等の外部人材の協力を得たりするなど、土曜日等に実施することの利点を生かした工夫を行うことが期待される。

・「月~金の中で時数を調整して、児童生徒と向き合う時間や授業改善のための時間に活用することも考えられる。」

・「総時間に上乗せするのではなく、平日の時間を土曜日に移し、平日の空いた時間を個別指導のためや、教材研究に使うのは有効である。」

  

 

参考資料

(昭和六三年一月一日)

 

(基発第一号、婦発第一号)

 

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長、労働省婦人局長通知)

 

労働基準法の一部を改正する法律(昭和六二年法律第九九号)については、昭和六二年九月二六日付け発基第七六号により、労働事務次官より通達されたところであるが、同法による改正後の労働基準法並びにこれに基づく労働基準法第三二条第一項の労働時間等に係る暫定措置に関する政令(昭和六二年政令第三九七号)及び労働基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和六二年労働省令第三一号)による改正後の労働基準法施行規則の内容等は下記のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。

 

 

1 法定労働時間

 

(1) 削除

 

(2) 一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間

 

法第三二条第一項で一週間の法定労働時間を規定し、同条第二項で一日の法定労働時間を規定することとしたが、これは、労働時間の規制は一週間単位の規制を基本として一週間の労働時間を短縮し、一日の労働時間は一週間の労働時間を各日に割り振る場合の上限として考えるという考え方によるものであること。

 

一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間とを項を分けて規定することとしたが、いずれも法定労働時間であることに変わりはなく、使用者は、労働者に、法定除外事由なく、一週間の法定労働時間及び一日の法定労働時間を超えて労働させてはならないものであること。

 

なお、一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。また、一日とは、午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とするものであること。

 

(3)~(6) 削除

 

2 変形労働時間制

 

変形労働時間制は、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、労使が労働時間の短縮を自ら工夫しつつ進めていくことが容易となるような柔軟な枠組みを設けることにより、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週休二日制の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的とするものであること。

 

(1) 一箇月単位の変形労働時間制

 

イ 趣旨

 

現行の変形労働時間制は、変形期間が四週間以内とされているが、この最長期間について、通常の賃金計算期間である一か月としたものであり、今後週法定労働時間が四六時間、四四時間と段階的に短縮された場合に、四週五休制あるいは四週六休制を採用することにより対応しようとする場合にはこれによらなければならないものであること。

 

なお、変形期間の最長期間が一か月に延長されたほかは、改正前の変形労働時間制と要件等は変わらないものであること。

 

また、一箇月単位の変形労働時間制についても、一年単位の変形労働時間制において一日、一週間の労働時間の限度等が設けられたことの趣旨等にかんがみ、適切な運用がなされるよう十分指導すること。

 

ロ 労働時間の特定

 

一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるもの(改正前の労働基準法第三二条第二項における「就業規則その他」と内容的に同じものである。以下同じ。)により、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週四〇時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。

 

なお、法第八九条第一項は就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているので、就業規則においては、各日の労働時間の長さだけではなく、始業及び終業の時刻も定める必要があるものであること。

 

ハ 変形期間における法定労働時間の総枠

 

一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、変形期間を平均し一週間の労働時間が法定労働時間を超えない定めをすることが要件とされているが、これは、要するに、変形期間における所定労働時間の合計を次の式によって計算される変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内とすることが必要であるということであること。

 

40×変形期間の暦日数/7

 

ニ 時間外労働となる時間

 

一箇月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。

 

[1] 一日については、就業規則その他これに準ずるものにより八時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は八時間を超えて労働した時間

 

[2] 一週間については、就業規則その他これに準ずるものにより四〇時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は四〇時間を超えて労働した時間([1]で時間外労働となる時間を除く。)

 

[3] 変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間([1]又は[2]で時間外労働となる時間を除く。)