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●消極論➍ 事故、災害時の責任を問われる

消極論➍ 事故、災害時の責任を問われる

専門家の意見・当局の見解

ここでは、法律専門家の意見を紹介した方が説得力があるでしょう。

 

衛生推進者(管理者)と同様、労働安全衛生スタッフである「安全管理者」の責任について、『安全衛生コンサルタント49号・企業の安全衛生管理責任とコンサルタントをめぐる法律問題』(安西愈・元日弁連研修委員長,1998)からの引用です。

 

私は時々、安全管理研修会に招かれますと、演習問題というものを出題して答えてもらう。その中に必ず入れるのは、この会社の安全管理者が怠慢で、職場巡視をしなかった。その結果、(中略)仕事をしていて事故が起こった。こういう場合に、重大災害があって仮に送検されるとしたら、これは怠慢だった安全管理者が送検されるのか、(中略)生産過程の部長や課長が送検されるのか、だれがお縄を頂戴するのかと、こういう問題を出すことにしているんです。

その狙いは、これは安全管理組織として定められている安全管理者が送検されるんじゃないんですね。安全衛生法は事業者責任ですから、まず社長の責任です。そしてラインの責任なんです。で、安全管理者が怠慢をして、職場を巡視しなくて、危険や違反を指摘しなくて放置していても、その怠慢から不安全状態が放置されているとき処罰されるのは安全管理者ではないのです。安全衛生法はどこにも「安全管理者を罰する」とは書いていない。処罰されるのは「実行行為者」なんです。

安全衛生法122条は『行為者を罰する』と書いてある。行為者はだれかというと、会社あるいは社長から権限を委ねられて部下を指揮監督して業務を遂行するものが『行為者』なんです。だから安全管理者がちゃんとやらないと、「処罰されるのは安全管理者ではなく、罰則はあくまでラインの責任者となるのですよ。」とこういっているわけであります。

 

念のため、監督官庁である労働基準監督署にも問い合わせましたが、衛生管理者(推進者)に対する見解は上記引用と同趣旨でした。

 

 

また、日教組全国教研(民主的な学校づくり分科会,2016)でも、「衛生管理者・推進者等が責任を問われることがあるのではないか?」という質問に対し、日教組顧問弁護士は「事業者が責任を持つのは当たり前で民事的な責任を問われることはない。

 

どこまで各職場でスタンスをとれるのか。できるのであれば衛生推進者をやればいい。“裏付けのある発言”ができ、問題を指摘し改善させることができる。」と助言しています。